日本酒マーケット 1 (級別制度がなくなるまで)

過去、何度か「日本酒ブーム」と呼ばれる時代がありました。
 
私の記憶の範囲では、最初のブームは「越乃寒梅」に代表される新潟ブームです。
 
 
 
そう!
 
「淡麗辛口」
 
という言葉はこの時代に生まれました。
 
それまでの日本酒は、「甘い」日本酒が好まれ、今ではほとんど見かけなくなった「糖類添加酒」が、ごく当たり前に飲まれていました。
 
 
【 級別制度 】
当時は、今の様に「特定銘称」などなく、「特級」「一級」「二級」に分類され酒税も級別に決められていました。
 
お酒を選ぶ際、「特級」とついているとなんとなく「おいしそう!」と思ってしまいますよね。
それに比べて「二級」とついていると「安酒(やすざけ)」と思ってしまいます。
 
しかし、そこには「税金」というごまかしがあったのです。
 
酒税は、
・ 特級:約1,000円
・ 一級:約500円
・ 二級:約200円
(全て1.8L換算・アルコール度数15~16)
 
この様に決められていました。
 
しかし、この「級別制度」。
 
基準が、
・ 特級:品質が優良であるもの
・ 一級:品質が佳良であるもの
・ 二級:特級及び一級に該当しないもの
 
というとても曖昧なもので、しかも決めるのが国税局酒類審議会という所で「官能審査」によって決められていました。
つまり、国税局の人間が、それぞれの判断(舌)で決められていたのです。
 
例えば。
 
原価が、2,000円のお酒があったとしましょう。
 
このお酒が、販売される時には酒税がOnされて、
・ 特級:3,000円
・ 一級:2,500円
・ 二級:2,200円
という価格になります。
 
蔵元としては、原価が一緒なのに国税局によって勝手に酒税をOnされてしまうので、面白くないわけです。
 
 
 
 
やがて、この事に憤りを感じていた蔵元は、鑑査を通すと「特級」になってしまう品質のものを、敢えて「二級酒」として酒税分安く販売するという販売方法を取る様になってきます。
 
この頃、誠しやかにささやかれていた
 
「日本酒は特級酒より二級酒の方がうまい」
 
という噂はこの事から出たと思われます。
 
やがて、有名無実となってしまった「級別制度」は、平成元年に「特級」が、平成4年に「一級」「二級」が廃止されました。
 
今でも、「特撰」「上撰」「佳撰」というお酒を見かける事があると思いますが、これは、級別制度に慣れていた小売店からの要望に蔵元が対応しているものです。
とかく、人は、「順序」を求めるものです。
 
 
【 特定名称 】
 
今、日本酒はご承知の様に「特定名称」で区分けされています。
 
特定名称は、吟醸、純米、本醸造の3つに大きく分けられます。
 
さらに分けると、純米大吟醸、大吟醸、純米吟醸、吟醸、純米、特別純米、本醸造、特別本醸造。
この8つになります。
 
しかし、この特定名称。
 
例えば、「純米大吟醸」と「純米」を飲み比べた場合、必ず、「純米大吟醸」の方がおいしいという訳ではない、というややこしさがあります。
 
さらに!
 
最近では特に、「原酒」「生酒」「生貯蔵酒」「直汲み」「荒走り」「無濾過」等々。。。。。
 
いろいろな装飾語がついてきます。
 
特定名称だけでは差別化が難しいという悩みを持っていた蔵元の苦肉の策です。
 
つまり!
 
日本酒はわかりにくくなっている、という事です。
 
こうなってくると、昔の級別制度の方が良かった、という声が聞こえてくる事もあります。
 
 
 
【 まとめ 】
 
<日本酒が売れた時代> (  ~1970年代)
日本酒は、過去「級別制度」の元、マーケットが安定していた。
これは、アルコール市場そのものが今より単純であり、日本酒の消費量も今よりは遥かに多かった。
当時、蔵元は日本酒を作れば売れた。(1970年代頃までは)
 
<日本酒が売れなくなった時代> (1970年代~  )
日本酒が売れなくなってきたので、酒税逃れをして小売価格を下げる為に、「級別制度」を否定した。
級別制度が廃止され、「特定名称」が出てきた。
一時は「吟醸」がありがたがられた時代もあったが、変わらず日本酒のマーケットは縮小を続けた。
 
次回以降、この「日本酒が売れなくなった時代」以降を記事にしていきたいと思います。