会社に戻ると、私の退職願いを見つけた上司からこんな事を言われました。
「(会社の近くの)喫茶店で専務がお前の事を待ってらっしゃるから行ってこい。」
ビックリしました!
そうですっ!
就職活動をしている時、高級寿司屋から高級クラブ、そして高級住宅街の豪邸に連れていかれたあの専務です。
会社に入ってからよくわかったのですが、この「専務」。
実は、とても偉い人だったのです。
営業関係の責任者。
会社の No2 でした。
しかも、気性が荒く、非常に激しい人でした。
さすがに会社に3年近くいますから、この頃にはそこらへんの事はよぉくわかっていました。
「何の話だろう・・・・・」
びくびくしながら、喫茶店の扉をあけました。
専務は、一人でコーヒーを飲みながらゆっくりとタバコを吸っています。
「遅くなりまして申し訳ございません。」
「おぉ。石井くんか、久しぶりだなぁ。ま、座れ。」
私のコーヒーが運ばれてくると専務が突然口を開きました。
「お前、会社を辞めたいらしいな。」
「!!」
もう、ビックリしました!!
その事は、私と私の背広を着た上司しか知らないはず。
なのに、なんで専務がご存じなの?
「えっ。そ、それは・・・」
「東京がいやか。」
「いえ、そういう訳では。」
「まぁ、ええわ。お前、広島へ行け。」
「えっ?」
「広島はこじんまりとした店だで、いろいろと覚えるにはいいと思うぞ。」
「は、はい。」
突然の転勤話です。
【青天の霹靂】(せいてんのへきれき)とは、このことですっ!
まだ3年生のひよっこの石井は、転勤なんて、想像すらしてませんでした。
「話はこれで終わりだ。支店長、呼んできてくれ。ま、頑張れ。」
「失礼します。」
もう、頭の中は「?」マークでいっぱいです。
えっ?
なに?
ひょっとして、今、転勤の命令だったの?
えっ?
転勤って、こんな感じで決まるの?
えっ?
えっ?
もう、パニックです。
何が起こってるのか、全くわかりません。
そして。。。
その日から約2週間後の2月14日。
私は、広島に向かう新幹線に乗っていました。